体内で発生した活性酸素は、そのままにしておくと体に悪さをして、老化や病気の原因となります。
もちろん、その点は人の体ですから、ちゃんと<余分な活性酸素はチョチョイのチョイで消しちゃうよシステム>が備わっています。
さらに積極的に除去するためにも、<抗酸化物質の摂取>、<生活改善>が必要になります。
1 除去システム
活性酸素の攻撃から私たちの体を守る働きをする物質をスカベンジャー(抗酸化物質)といいます。
スカベンジャーには、体内で作られる酵素(スーパーオキサイドディスムターゼ<SOD>、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなど)のほか、体外から摂取して補うものとしてビタミン(ビタミンC・EおよびB群など)、その他の抗酸化物質(カロテノイド、ポリフェノール、ミネラルなど)があります。
活性酸素には、先に解説したように、
- 「スーパーオキサイドラジカル」
- 「過酸化水素」
- 「一重項酸素」
- 「ハイドロキシカルラジカル」
の4種類があります。
この中でも、3「一重項酸素」は有効に消去する酵素がなく、カロテノイドやビタミンの力が必要です。
また、4「ハイドロキシカルラジカル」も同様に、カロテノイド、ビタミンなどの助けが必要です。
このため、活性酸素を除去するには、体内の酵素だけでなく、体外から栄養素の摂取によっても、除去活動をフォローする必要があるのです。
2 抗酸化物質の摂取
【バランスの良い食事】
健康雑誌やテレビ番組で、○○に効くのはこの食材! という特集をよく目にします。
でも、いくら体に良いといっても、そればかりを食べていては、それこそ偏った食事になってしまいます。
抗酸化効果のある物質は何ですか? と問われれば、ビタミン、ミネラルのほか、酵素の生成を助けるたんぱく質も重要です。
さらに、ビタミンCを多く含むブロッコリー、ピーマン、さつまいも、シシトウなどの野菜、レモン、いちご、キウイ、みかん、桃などの果物、ビタミンEではナッツ類、植物油、大豆など、ビタミンB2では卵、チーズ、牛乳、たらこなど、β-カロテンではにんじん、かぼちゃ、小松菜、にらなどなど……。
このように、抗酸化物質を含んだ食材をあげていけばそれこそキリがありません。
つまり、毎日の食事をするうえで、できる限り、添加物を含まない、農薬を極力使っていない食材を使い、
偏りなくバランスのとれた食事をすることが何より大切なのです。
【日常的に気を付けること】
では最後に、食事以外で、日常的に何に気を付けたら活性酸素の害から身を守ることができるのでしょうか?
日々の暮らしの中で、何気なく行っていることが、活性酸素を生み出しているかもしれません。
そんな意味でも、あなたの暮らしを再度見つめなおし、生活改善を行うことが必要かもしれません。
例えば、ストレス、喫煙、紫外線・X線、化学物質、激しい運動がキーワードです。
以下で、詳しく見ていきましょう。
3 生活改善
【3-1 ストレス解消】
「上司にまた叱られた。何度やってもうまくいかないんだよなぁ。どうしたらいいんだ」
「期限までに仕事がとても片付きそうにない、このままじゃ連日泊まり込みだ」
などなど、心の中にモヤっとした、消えずにいつまでも残っている黒―い空気のようなもの、あったりしませんか?
そうです。それがストレスです。
ストレスとは、体の外側から加わる刺激によって、一時的に心身のバランスが崩れた状態になること。
仕事・子供・住居環境・病気・人間関係などなど、現代社会では、毎日を普通に過ごしていても、
ストレスがないなんてことはほぼありえない状況です。
ストレスがあると、脈拍が速くなり、血圧や血糖値も上昇します。
これは自律神経の働きでホルモンの分泌が異常になるからです。
ストレスがあると、心身がストレスに対抗するように副腎皮質ホルモンが分泌され、緊張が増します。
反対に、緊張を和らげようと、副腎ホルモンを分解するアミン酸化酵素という酵素が分泌されます。
このように、ホルモンの生成や、酵素によってホルモンが分解される過程で、活性酸素が発生するのです。
しかし、ストレスのない生活は不可能ですから、それを解消することが重要です。
ひとと語り合ったり、趣味を楽しんだり、自分なりのストレス解消法をみつけることが大切なのです。
【3-2 禁煙】
公共施設やテナントビル、レストランなどで、分煙や喫煙禁止など、
喫煙者には肩身の狭い状況が、どんどん広がってきています。
これは、タバコが原因で病気になることが、医学的にはっきりと証明されているからです。
わざわざタバコを吸って、進んで病気になろう、なんて考える人はいません。
でも、自分はそうならないだろう、なってもたいしたことない……。
誰もが心の中でそう、思っているのです。しかし、現実はそうではないのです。
たばこの煙には、ニコチンやタールだけでなく、発がん物質や、活性酸素である過酸化水素が含まれています。
抗酸化物質を破壊し、活性酸素を増やすため、特に肺や呼吸器系の疾病を引き起こす原因となります。
例えば、タールは肺胞壁(肺の中に無数にある袋状の空洞で、血液やガスの交換を行う場所)に付着すると
マクロファージ(白血球の一種で、死んだ細胞や侵入した細菌などを捕食して消化。免疫情報をリンパ球に伝える)がきて大量のスーパーオキサイドロジカル(活性酸素)を吹きかけ、たんぱく質分解酵素を出して取り除こうとします。
スーパーオキサイドロジカルは過酸化水素となり、さらに煙の中の窒素酸化物と反応してハイドロキシルラジカル(活性酸素)を発生、肺を攻撃し続けます。
また、たんぱく質でできている肺胞壁は、たんぱく質分解酵素によって分解されますが、
本来であれば同時に抑制酵素の働きによって分解されずにすむのです。
ところが、タールによって大量の活性酸素がまかれるため、抑制酵素、さらに肺胞壁が破壊され、
肺の機能自体が弱くなってしまうのです。
喫煙によって、肺気腫、肺がん、咽頭がん、舌がんをもたらす危険性が高くなります。
また、喫煙によって体内のビタミンが破壊されてしまうため、抗酸化物質であるビタミンCが不足し、
免疫力が低下して風邪をひきやすくなり、他の感染症にもかかりやすくなります。
【3-3 紫外線・X線を避ける】
松崎しげるか、日本橋たいめいけん三代目・茂出木浩司(もでぎ・ひろし)か、といえば言わずと知れた、<どっちが黒いか>対決ですね。日焼けは健康的で良いとはいわれますが、あそこまで黒いと、将来、皮膚ガンになってもおかしくないのではと心配になってしまいます。
紫外線は、太陽光線に含まれる波長が可視光線より短く、放射線(X線)より長い光線です。
殺菌消毒、ビタミンDの合成、血行や新陳代謝の促進など、私たちの体にとって大切な効果をもたらしてくれますが、強い日差しを長時間浴びると肌の細胞を分解して、活性酸素を発生させます。
また健康診断や人間ドッグなどの検査でレントゲン写真を撮ることがあると思いますが、
撮影回数は、必要最小限にとどめることが重要です。
紫外線よりもさらに強力な電磁波であるX線は、体を通り抜ける時に体内の細胞の水分を瞬時に破壊し、
大量の活性酸素を発生させます。この時、DNAを傷つけ、ガンなどの原因となるのです。
妊婦へのレントゲン撮影を原則禁止としている理由が、
放射線が胎児への悪影響を及ぼすことがわかっていることからも、X線の危険性を表しているでしょう。
【3-4 化学物質を避ける】
化学物質と聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか?
「暮らしを便利する」という肯定派から、「環境を破壊する悪者」という否定派まで、
考え方はひとそれぞれでしょう。
世の中に存在しているあらゆるものが化学物質で作られていますが、
私たちの暮らしにとって便利であるはずの商品の中に、体にとって有害なものを含む商品が存在し、
さらにいえば、含有物質によって、健康被害を受ける人が多く存在するという事実を忘れてはいけません。
特に私たちの暮らしに密着した商品の中で注目したいのが、
見た目や味を良くするなどのために食品に含まれる<食品添加物>
強力な洗浄力と香りが人や自然環境に悪影響を与える<洗剤・柔軟剤>
家庭以外にも、ゴルフ場で大量散布され、時に呼吸器や目を刺激したり、頭痛を引き起こす<防虫剤・殺虫剤>
化学物質過敏症の発症の原因のひとつといわれる<合成建材>
などです。
異物である化学物質が体内に入ると、それを除去するために強力な活性酸素が発生し、
自らの臓器を攻撃するという悪循環が繰り返されます。
人によっては重篤な病を発症するというリスクを常に意識しながら、
化学物質を排除、あるいは摂取する必要があります。
【3-5 激しい運動を控える】
運動は体にとって大切。でも、何でもやりすぎは体に悪い。
その典型が、アメリカのジョガー、J・フィックスの死でした。
体の健康のためにジョギングをしましょう!
36歳からはじめたジョギングを通じて、そう提唱してきたアメリカのJ・フィックスが、
1990年、ジョギング中に突然死したニュースは、世界中のジョガーたちに大変なショックを与えました。
52歳の若さでした。
長年にわたる運動のしすぎによる活性酸素の障害が、原因のひとつではないかと考えられています。
このように激しい運動は、酸素を大量に摂取する必要があるため、
必然的に体内における活性酸素の量が増加してしまい、さまざまな疾病を引き起こす原因となっているのです。
しかし、運動をしなければ体力が落ちて動けなくなったり、臓器の動きも鈍くなってしまいます。
そのため、適度な運動は必要になってきます。
激しく呼吸が乱れたり、疲れてへたり込むような運動ではなく、
1分間に100~120m程度のウオーキングを毎日20分から25分ぐらい行うのが望ましいとされています。
健康のためには、何でもやりすぎは禁物です。
適度にリラックスしながら行える運動を行うことが大切なのです。
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